<スライド1> 令和6年能登半島地震と きこえないコミュニティについて 石川県聴覚障害者災害救援対策本部 副本部長 藤平淳一 (2024年8月30日/JDF能登半島地震支援センター連絡会議) <スライド2> 令和6年能登半島地震 経緯報告 ・元日の能登半島地震時に、きこえない・きこえにくい人(社会福祉法人石川県聴覚障害者協会会員13名、やなぎだハウス利用者18名(そのうち、重複しているのは12名))に対して安否確認を行った。 ・ろう高齢者(男性)は、地域のコミュニティに馴染めず、避難所に逃げるのを拒み、深夜には零下となる車庫(自宅は全壊のため)にて、2週間もの生活してきた。 ・近所の人と身振りでコミュニケーションが取れているろう高齢者(女性)は、その近所の人に導かれ、避難所に移動した。食べ物や水も近所の人の手助けのおかげで避難生活できていた。ただ運営側がきこえない・きこえにくい人がいることを把握していなかったため、出入り口の近くで寒い思いをしていることを伝えられなかった。薬も欲しかったが、それを伝える手段もなかった。 <スライド3> 令和6年能登半島地震 経緯報告 ・1.5次避難所開設の情報を知り、情報保障・通訳派遣の観点から、県障害福祉課に対し、ひとつの区画にろう者をひとまとめにしてほしいと要望した。 1月12日より奥能登より順次にろう被災者が集まった。最終的にはきこえる家族2名を含めて11名となった。 ・白山市がろう者の集団避難受け入れを発表。1月18日よに白山市の2次避難所に11名を移転し、ろうあ相談員を常駐させ、情報保障や罹災証明書など各種手続きを支援開始。 ⇒福祉避難所的な役割を果たすことができた  コミュニティの提供ができた ・11名に対し、今後はどうするか(自主性を尊重しながら)、個別に相談をしてきた。 ・11名のうち自宅が全壊となったのは6名(4世帯)。 ・半壊の判定は3名(2世帯)。自分が生まれ育った地域に帰りたいと強く要望。後日それぞれ自分の地域の仮設住宅へ入居された。 <スライド4> 令和6年能登半島地震 経緯報告 ・全壊4名(3世帯)は、今後の生活に頭を悩ませていた。(@地域に帰るにも住む家がない(公費解体で更地になる予定)。A財産もない。B仮設住宅に数年住んだとしても、その次の家屋の確保ができない。) ・日本モバイル建築協会から当対策本部に、「モバイル建築」による仮設住宅の情報提供あり。恒久的に使用でき(住み続けることができ)、かつ、移動可能なものであると紹介された。 ・ろう者の特性からいって、ひとつのコミュニティの構築が大事である。 そのことから、次のような理由で、当対策本部として「ろう者のムラ」を提供が必要と判断した。 <スライド5> ろう者のムラの意義 ・コミュニケーションの確保 ・ろう者同士が集まることで、手話言語などの共通のコミュニケーション手段を使いやすくなる。将来を不安視している仲間同士で手話言語で話し合え、情報交換ができる。これにより、ムラ内で情報共有や日常生活の支援がスムーズに行える。 ・安全と安心の確保 ・共通の手話言語や、ろう者の文化を持つ人々がムラに集まることで、復旧作業の手続き等が効率的に行われ、支援者のサポートの中で、安全と安心が確保される。 <スライド6> ろう者のムラの意義 ・特別なニーズへの対応 ・ろう者特有のニーズに対応する必要がある。ろう者にとって情報がアクセスしやすい視覚的な情報提供の環境の整備をする。かつ手話通訳(要約筆記)の登録者の常駐や派遣をすることによって、必要な情報や支援を迅速に行う。特に、やなぎだハウスに隣接している「ろう者のムラ」では、こうしたニーズに即時に対応しやすくなる。 ・心理的なサポート ・同じ経験を共有することで、心理的なサポートが得られる。災害後のストレスやトラウマを乗り越えるために、ムラの中で同じ状況にいる人々とのつながりは重要です。 <スライド7> ろう者のムラの意義 ・社会的孤立の防止 ・震災後、特に音声言語・音声情報の遮断により、ろう者は孤立しやすかったため、「ろう者のムラ」を作ることで、お互いに支え合い、支援者もムラに集まり、社会的な言語的な孤立を防ぐことができる。 (福祉避難所も同様のことがいえるだろう。) ・今回の取り組みは、被災したことで、かつ情報・コミュニケーションにバリアーがあったことに起因とした心の傷を癒し、被災ろう者が安心して暮らし、積極的に社会に参加できる環境を提供するためである。すなわち、「ろう者のムラ」の形成は、被災ろう者の今後の生活の質を向上させる大きな一歩となるだろう。 <スライド8> みんな奥能登に「おかえりなさい会」 <第3柳田団地(奥能登ろう者の村)> ・8月29日(木) 13時〜15時に、柳田公民館(やなぎだハウスより車3分)にて、当対策本部主催で【みんな「おかえりなさい会」】を実施。 ・来賓は次のとおり。 ・聴覚障害者災害救援中央本部運営委員長(全日本ろうあ連盟理事長) 石橋大吾様 ・一般社団法人日本モバイル建築協会代表理事 長坂俊成様 ・能登福祉救援ボランティアネットワーク共同代表 石井布紀子 様 ・JDF能登半島地震支援センター長(石川県身体障害者団体連合会会長) 田中弘幸様 ・株式会社クリエイト礼文取締役CEO 大場友和様 ・北信越ろうあ連盟理事長 石川渉様 <スライド9> 写真 住宅建築の様子。更地(やなぎだハウス駐車場)から完成まで6画像 <スライド10> 今後の運動展開について@ ○支援金(聴覚障害者災害救援中央本部)  ・構成団体:   全日本ろうあ連盟、全国手話通訳問題研究会、日本手話通訳士協会  ・33,005,288円(7月25日現在)  ・募金〆切日→10月10日 ○義援金(石川県聴覚障害者災害救援対策本部)  ・構成団体:   石川県聴覚障害者協会、全国手話通訳問題研究会石川支部、石川県手話サークル連絡協議会、石川県要約筆記サークル連絡会  ・10,003,091円(7月22日現在)  ・募金〆切日→10月10日  ・申請のあった被災者に按分して支払う。 〔表〕 全壊  きこえない・きこえにくい人 4  きこえる人 2 大規模半壊  きこえない・きこえにくい人 1  きこえる人 2 中規模半壊  きこえない・きこえにくい人 1  きこえる人 3 半壊  きこえない・きこえにくい人 2  きこえる人 14 準半壊  きこえない・きこえにくい人 5  きこえる人 4 準半壊に至らない(一部損壊)  きこえない・きこえにくい人 6  きこえる人 27 2024年8月26日現在 計  きこえない・きこえにくい人 19  きこえる人 52 <スライド11> 今後の運動展開についてA ・仮設住宅(モバイル建築)の供与期間(おおよそ2年)後には、現在の能登町所有の駐車場(やなぎだハウス駐車場)を出て、別のところに移築せねばならない。 ・@それぞれの自宅(公費解体で更地になった土地)にモバイル建築を移動させて住むか、A石川県聴覚障害者協会が土地を購入し、モバイル建築を移動させ、引き続きろう者のムラとして住むか、のいずれかになる。入居者4名に9月中旬に面談し、決定していく予定。 ・Aの場合は土地の購入が必要である。@Aともモバイル建築の移転費用、土台等再築費用が必要である。それらの費用を年内にクラウドファンディングにて募ることを計画中である。